建物旅行記

建物旅行記-香川県庁舎(丹下健三)

カテゴリをつくったものの、さあどれからいこうか、と思いましたが、やはり僕が最初に紹介するのはこの建物です。

丹下氏の設計した建築の中で、最も建築当初の輝きを失っていない(と思う)建物が、この香川県庁舎です。

和の垂木を、コンクリートの壁梁で表現し、コンクリートによる荒々しさと和のたたずまいを共存させ、かつ全体として非常にバランスがとれています。建築を生業と志す上で、この美しさは特筆すべきものがありますね。

この建物のすごいのは、これだけの薄いコンクリートを用いながら、耐久性を兼ね備えた施工が行われていることです。このようなディテールの建物は実際には1970~90年代はたくさん作られたのですが、今となれば皆、見るも無惨に老朽化し、あるものは取り壊され、ある物は無粋にも真っ白なペンキを塗られ、見る影もないものが多いです。

しかしこの建物は違います。建築当時の技術者の細心のコンクリート躯体作り込みがあり、そしてその建物のメンテナンスを怠らなかった香川県庁の方々の尽力があって、初めてこの美しい建物が保たれたのです。

では、いくつか細部を見ていきましょうか。

1Fピロティの様子。このバランス。この力強さ。そしてかつこの軽快さ。往時のモダニズムの象徴たるこの空間は、建物があるべき姿を提案し、当時の人に新鮮な驚きを与えたことでしょう。

ピロティから続く内部空間も素晴らしいですね。まるで浮いているかのような階段と渡り廊下。こういう場合、素人が設計すると奥側に階段をつけますよね。ところが手前であえて上がらせ、渡り廊下からホールを見渡させる。支える躯体も美しいですね!「空間」とはこのように構成するんだ、という丹下先生の声が聞こえてくるかのようです。

1Fホールでは、丹下建築を忍んで、特集展示が開催されていました。

展示に従いその軌跡をたどると、この日本に丹下先生が残した足跡の偉大さに胸が引き締まる思いです。私も施工者の端くれですが、一度で良いからこのような唯一無二の建物の建築に携われる機会があれば良いなと思います。

写真をあまり撮らなかったので、このあたりで紹介は控えますが、この建物は本当にいろいろな発見があります。たくさんの賞をもらったことも、この空間からもさもありなんと思いますね。

これからも、訪れた建物を少しづつ紹介していきたいと思いますので、もしよろしかったらご覧下さいね。