現場あれこれ

設計図の不備を優しく直す

現場監督をやっていて、一番ストレスがたまるのは何でしょうか?

作業員が希望通り来ない、雨ばかりで躯体工事が進まない、職長や作業員が言うことを聞かないなど、現場監督はストレスがつきものですが、一番のストレス、僕はこの「設計図がまともじゃない」事だと思います。

設備機器が天井内に収まらない、鉄筋が柱・梁の中に収まらない、そのままだと雨が漏る。等はまだ序の口で、意匠図がほとんど線画スケッチみたいなもので申請図相互がほとんど合致しておらず、建物として成り立たないものを書いてくる設計者もいます。

いままでで一番驚いた設計者の台詞は、すぐ見積もりをくれというので「きちんとした設計図がないと見積もりできないですよ?」って聞いたら、「逆だ!見積が出来ないと設計できない!」って返された事ですね。

じゃあ、そういう物件に当たったら、どうすればいいのでしょう。大切な要素を、いくつか書いていきましょう。

施主との信頼関係を築く

一生懸命図面を検討する?協力会社に力を貸してもらう?いいスタッフを集める?うん、勿論大切です。でもね、

まず、大事な事は「施主との信頼関係を築く」ことです。連絡や約束を守り、「この人は信頼に足る人だな」と思ってもらう事。僕はいつも会社のキーマンと会う前に、その会社の事を徹底的に調べます。どういう物を作り、扱い、どのような層に支持されているのか。そしてそれに基づいて、「実際にはこういう機能が必要なんじゃないんですか?」という付加価値を質問してみる。など、施主に寄り添った提案などで「この建物をよくしたい」という意思をみせることです。

最初の段階で「この設計図がダメで。。。」ってやるとダメです。人の悪口は自分の信用も落とします。まずは「いい物にしたい」という自分の気持ちを相手に伝えること。これが一番最初です。

具体的な提案をする

そして、その点で一致できた後で、「何処がどう収まっていないか」「それを直すにはどうすればいいか(時間(工期)をもらう、費用を出してもらう)などを提案します。そのときには必ず「施主に得なることをセットにする」事も大切。「金儲けしようとしてるな」と思われたら最初の信頼もアウトです。

設計者がいい加減な建物は、施主のニーズの拾い出しもいい加減なことが多いです。余計な物を単にかっこよくするためにつけていたり、変なこだわりでグレードを上げていたりすることも。そういう「施主との意思の違い」をしっかり感じ取り、グレードを上げ下げしていく。

設計を立てて、その手柄にする

勿論、設計者のプライドを損ねてはいけません。むしろ設計者のミスを解らせつつ、理由付けをして「設計が悪いから」というニュアンスを薄めて表現する。設計に「貸しを作る」のです。さらには綺麗なディテールの提案は、きっとそれほどお金をかけずに、設計者を満足させるはずです。彼らはデザインが大好きでこの仕事についています。あくまで設計の主役は彼ら設計事務所です。それを忘れてはいけません。

変更の方向性を決め、施工図に反映する

そのあたりまでこれれば、もう貴方はその建物の事を隅々まで解っていることだと思います。そうすれば施工の問題点もかなり解決の方向性が出来ているはず。方向性だけ出来れば、後は施工図に反映して、その変更の趣旨を皆に周知する。あとは信頼できるスタッフと協力会社に任せれば自然といい物ができあがります。

いかがですか?現場監督の仕事って、ただ現場にいるだけじゃないんですよ。オーケストラの指揮者になぞらえられるのは、そのような側面があるからなんですよ。

このようにできるまでは、勿論時間がかかります。しかしそうできたときの達成感、満足感。出来ればこの仕事を目指す、多くの人に味わって欲しいなあと思いますね。