現場あれこれ

誰のための安全か?

現場を運営して、最も重視しなければいけないのは何か?

この答えは簡単です。「作業員の安全」これ以外にはあり得ません。

恐らく、どの現場監督に聞いてもそう答えることでしょう。

でもこれ、よーーーーく考えてみると、おかしくないですか?

誰しも、「自分が怪我をしたい」ましてや「現場で死にたい」なんて思っていないんです。誰も思っていないことなのに、一番大切にしないといけないと思われている。。。。矛盾していますよね?

じゃあなんでそうなるか?

理由は、「皆が、コストと時間と戦っている」からです。

具体的に例を挙げれば、

「廻りを片付けて、作業環境を整え、通路を確保してから作業する」

絶対安全にとっては必要なんです。でも、皆がそれを端折ろうとする。

「ちょっとした作業でも、はしご等に頼らず、足場を組んで作業する」

これも絶対に安全に必要です。でも皆「もったいない」とはしごを使う。

「始業前点検の端折り」「不良道具の取替漏れ」「通路の近道行為」現場で起こるこれらの事故のほとんどが、この「時間」と「コスト」を「安全」よりも優先した判断の果てに発生しているのです。

しかし、事故を起こさないため、今現場で何が強調されているかというと、「ルールを守らせる」ことです。「手順書を守りなさい」「保護具をちゃんと使いなさい」「決められた場所を使いなさい」

もちろん、一面的にはそれは正しいです。しかし、本当に事故の起因となる「どれが優先か?」という課題については、いくらルールを厳しく言っても「いいの?予算も工期も間に合わないよ?」という言葉に負けてしまうのです。また、ルールばかり頭ごなしに押しつけ「何故それをするか?」が解っていないと、すぐ「工期と予算」に優先順位を譲ることになってしまうのです。

「安全ルールに対する講義」をその現場が毎朝2時間行えば安全は守れるか?「否」です。講義を受けた直後の作業員は、その講義で失った2時間を「どうやって挽回しようか?」と考え、何かを端折れないかを考え出すのです。これでは何の為の教育か、解りませんよね?

さて、ここまで話してきて、勘のいい人はわかりますか?安全にとって何が大切なのかを。

工期設定にゆとりを持ち、遅れを許容できる幅を持っておく。

下請けさんに厳しすぎる発注をせず、また仮設予算にゆとりをもつ。

厳しいルール設定より、「何故それをするか」の教育を行う。

お客様の要求は厳しく、予算や工期の短縮を強く求められる現場は少なくありません。しかし、それを全て下請けさんや作業員に押しつけてしまえば自ずと見えてくる結果は想像したとおりです。

だからこそ、そうならないような知恵がいる。

そう、我々現場監督の仕事は、彼らのために知恵や技術を用いてそれらをしっかりと確保していくことなのです。