Twitterをやっていて、このような言い方を目にしました。
一級建築士資格ってコスパわるくね? めちゃくちゃ難しいのに給料そんな良くないイメージ
一級建築士からすると、ちょっとショックな言葉ですよね?また、
これ本当にあった怖い話なんだけど、一級建築士合格して給料3,000円上がったの。3,000円。30年勤めないと回収できないの。
こちらは資格で払った金額を元を取るという発想ですよね?
両者とも業界人以外が見れば「その通りかな」と思うでしょう。でもちょっと待って下さい。一級建築士って「報酬を得る手段」としてなるのでしょうか?
例えば、同じように社会的に認められた資格があります。「医師」や「弁護士」確かにこの2つは日本で成功する確率が高く、かつ高い収入を伴います。でもそれを目指す人って「収入」を最上の目的として設定しているのでしょうか。僕の会った人の経験では、医師は「人の病気を助けたい」弁護士は「自分の手で困っている人を助けたい」こう思ってこの職業をえらんでいました。
一級建築士の資格は靴の裏の米粒
入社当時、高度成長期を経験した先輩からはこのように言われました。とっても食えないと。しかし、今はどうでしょうか?建築技術者は高い知識とモラルが要求されるようになり、かつその資格は医師や弁護士と同様に尊敬される資格となりました。米粒どころか、その資格を持っていれば、一発で転職が出来るほど希少価値のあるものとなりました。
しかしそうなった今でも、一級建築士を持っている人の給与が大きく上がったかというと、一概には言えません。何故なのでしょうか。
僕は、資格というのは「機会」を得ることだと思っています。それが出来る素養があると国から認められ、その分野の仕事は基本的に何でも選択が可能であると。「意匠設計」「構造設計」「設計監理」「現場管理」そしてそれらを束ねる「経営・マネジメント」建設業における、全ての機会がこの資格によってあたえられるのです。
つまり、資格はあくまでスタートラインだということです。
その上で、選んだ職業によって収入に差が出るのは当然のこと。リスクがあっても大金を得たい、名声を得たいというなら、文字通りトップとなって設計事務所やゼネコンの社長を目指せば良いし、収入を得るより技術を生かしたければ有名な事務所や大手ゼネコンに入ってそういう部署を目指せばいい。つまり「建築士」という資格に収入が伴うのでは無く、あくまで自由な選択の結果として収入が伴うということなのです。
医者も同じですよね、開業医を選ぶか、勤務医を選ぶかで収入は大きく変わりますが、どちらが良いか、なんて選んだ本人の好みです。
じゃあ、同じ会社にいるのなら、とってもとらなくても同じじゃん
そう思うでしょ?違うんですよ。同じ会社にいても、やはり「選択肢」の違いが出るのです。基本、建設会社で一級建築士を持っていると、「大きな仕事」を任せられやすくなります。これは「資格要件」に当てはまるからで、公共工事などでは大きな要素です。また、社内の昇進などでも、最後の一押しになるのです。
例えば貴方が、人事担当者だとしましょう。2人の実力伯仲の社員がいる。成績は五分五分。どちらを昇進させようか???となった時、片方は一級建築士、片方は一級施工管理技士だったら、貴方はどうしますか?
そう「一級建築士」を持っている方が選ばれるのです。このように資格というのは、その人を活躍できるステージに、上げてくれる大きな要素なのです。
僕は27才の時に、一級建築士の資格を取りました。それから約30年。たくさん同期がいましたが、建築士を持っている人とそうでない人を知っている人だけで比べても、「現場所長」を務める早さはやはり、建築士を持っている人が勝るのです。
このような側面からも、資格は「機会」をあたえてくれる物だと言うことが解りますよね。単なる資格にかかったお金と、もらえる表面上の手当を単純に比べることは、ナンセンスなのです。
でも、それを生かしていない人が多いからいかんのですよ。
ただ思うのは、折角一級建築士というとびきりの「選択肢」を持っているのに、それを生かしていない事例を見ることです。
「勤務時間が長くて、締め付けが厳しくて、報酬はそうでもない」のに、それに甘んじてそこから飛び出ない人。この業界には多いですよね。。
それは建築士という資格への冒涜でもあると思います。自分の資格に自信を持って、次の選択肢を選んで欲しいと思います。その延長線上にこそ、尊敬されしかも報酬の高い「建築士」という職業があります。勇気を持って、自分の働くべき場所を見つけて欲しいと思います。