今日は現場から離れて、プレイベートな話題です。
僕には今年で86歳を迎える父がいます。最近記憶はかなり怪しくなってきたけれど、体はすこぶる元気で、12年前に近くに越してきてくれてからは、しょっちゅう色々お世話するようになりました。
幼少期、僕は父に厳しく育てられました。勉強はそこそこできたのでその面では叱られなかったのですが、マナーや言葉遣い、兄弟げんかや人への態度には激怒りしてよく手が飛んで来たものです。
ところが、中学生になったら、その指導がピタッと無くなって体罰がゼロに。そのとき、「おまえも半分大人だから、父さんもおまえを大人として扱う。もう怒られなくても自分で判断できるだろう。」と言われたことを今でも覚えています。
そして16歳の時。父は僕に時計をくれました。ちょっと大人のセイコーのメタルバンドの時計だったと思います。「勤続25周年でもらった時計だ。父さんは今のが気に入ってるからこれを誕生日のプレゼントにするよ」と言ってもらったのです。
むちゃくちゃ嬉しかったですね。これからずっと大事に使おう、と心に決めました。
しかし。。。その一週間後。僕はなぜかその時計をせずに、ポーチに入れて自転車の前かごに入れて走っていました。何でつけずにポーチに入れたのか?全く思い出せないのですが。。。そう、そのポーチを盗まれてしまったのです。
気づいたときにはポーチがない。警察にも届け、周辺をくまなく探し回りましたが、とうとうポーチは出てきませんでした。
失意。。そしてそれを父に告げるのが怖かった。手は出さなくなったとはいえ、怒ったときは本当に怖い父です。3日後の日曜日ににやっと「父さん。もらった時計、無くしました」と告げました。父は「おまえがバタバタしてたのは知ってたよ。そそっかしいのは知っている。十分反省もしてるだろう。もう気にするな。」と言ってくれたのです。もう涙が止まらなくて、申し訳なくて。勤続25周年の時計。もうそれからずっと後悔し続けて、40年がたちました。
そして一昨年。父が「最近時計がよく遅れるんだよなあ」「手先が震えるので、曜日と日付がずれたときに合わせるのが大変なんだよなあ」と漏らしていたのを聞いたのです。「これは」と思いました。そして11月の誕生日に、これを贈りました。
僕が父の時計を無くしてから、40年が経っていました。
父はたいそう喜んでくれ、本当に大切に使ってくれています。電波時計だから「遅れて困る」ことも「曜日日付を合わせる」のが大変ってのも無いんですよね。
なにより父は、「そんな前のことを覚えてたのか」と驚いていました。そりゃそうですよ。思春期の僕にとっては、一大トラウマ大事件だったのですから。やっとこさ40年越しに恩返しを果たせました。長かったなあ。(ってもっと早く返せよって意見もありますよね。。。)
今は週に一回ぐらい会って、とりとめもなく馬鹿話をする関係。やっぱり元気でいてくれるのが一番だなあと思いますね。これからも良い関係でいつまでもいたいと思います。