「労災隠しは犯罪です」厚生労働省のHPにはそのように書かれています。
「労災かくし」は犯罪です。|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
しかし、そうではない現実がある。だからこういうキャンペーンが張られている。その悲しい現実を目の当たりにしました。
そのきっかけは、ある方のツイートでした。
労災隠し 怪我した本人が本当に隠したくてやってると思う? 痛い思いして、補償捨てて、自腹で病院に行くんだよ? そうせざるを得ない状況を作ってる制度や環境のせいですよね?
「労災隠させ」という表現が驚きで、そこにぶら下がるレスも僕の意識とは全く異なるものだったのです。
そこで、あるアンケートを問うてみました。
(泣)フォロワー280人では無理だった。。。
全然母集団は少ないですが、やはり「元請けからの圧力」が有力のようです。
これだけでなく、その他にも調べました。わかった事は、今でも協力会社に「労災を隠させる」ような暗黙の強要や、あからさまな嫌がらせのようなものがあるという事実でした。
確かに昔、僕が入社した当初は確かにこのような言葉がありました。
怪我と弁当は自分持ちだよ!
しかし「現場の中でまだ平然と煙草を吸う人がいた」その頃でさえ、僕が強烈な違和感をおぼえた言葉でした。そして今、まだそのような労災隠しの強要が厳然と残っている会社が事実としてある。そのことに言いようのない感情がこみ上げたのです。
元請けにとって労災を「隠す」メリットとは何でしょう。アンケートで書いたように、
1,安全成績上げたい元請からの圧力
2,労基の罰則や労災還付金などの制度設計
そしてご意見としていただいた
3,工事が止まるリスク
等があると思います。
しかし、それを隠して、発覚した場合のリスクは計り知れません。会社としての指名停止や社会的な信用の低下は当然として、現場の責任者は「前科者」としてカウントされる事となります。あまりにもリスクとリターンが釣り合っていない。それなのに?です。
何故なんだろう。そう考えたとき、ある一つの結論になりました。それは
この頃と、監督官庁の意識は全く変わっていないのでは?という疑念です。
もし中小規模のゼネコンが、労災隠しを「犯罪」として捉えず、ペナルティーを強く受けていないのであれば、下請会社に暗黙の了解で隠す事を強要することは十分に考えられます。
僕は入社以来、平社員時代を含めて既に20を超える現場を担当してきましたが、労働基準監督署が臨検に来なかった現場はほぼありませんでした。また監督署には88申請の必要の有無にかかわらず、必ず仮設に関しては相談に行き、アドバイスを受けてきています。
ゼネコンの間に、その意識の差が未だに大きくあるから、そのような労災隠しが存在しているのではないか?しかもそれは長きに渡り是正されてきていないのではないか?どうしてもそういう疑念がわいてきます。
勿論、結論を断じる事はできません。しかし未だにそのような作業員軽視の習慣が横行しているのであれば、もっともっと労働基準監督署は全てのゼネコンに厳しい目を向ける必要があるのではないでしょうか。
労働基準監督署も人員不足。それはわかります。絶対的に査察官の数が足りていない。でもそれだけでしょうか。僕らは長きにわたり作業員さんを一生懸命教育し、「労災隠しは犯罪」と叫び続けてきました。にも関わらず未だそのような強要が横行しているのであれば、「うちは大目に見てもらってる」「少々隠してもかまわない」意識の業者がいるという事です。規模にかかわらず、そういう会社には重いペナルティーを科すべきだと思います。
そして、最後に手前味噌ですが、
僕は、上記の通り労災ゼロを達成した事がありません。悔しいですが仕方がありません。
「目が痛い。痛みが強くて、眼に傷が入ってるかもしれない」
「蜂にさされたんだけど、ものすごく腫れてきたんだ」
そう言われて、黙って家に帰って休めなど、人として言えません。すぐに同伴して医師に受診させました。当然労災扱いです。そんなの微塵も躊躇しませんでした。
また傷や怪我がひどい、と判断したら躊躇せず即救急車を現場に呼びます。これも当然の処置で何度も行っています。実際、心臓病で倒れた人がいた際もすぐ救急車を呼び、心臓マッサージと人工呼吸で蘇生術を行い、救急隊に引きついで、命を助けた事もあります。
何より大切なのは
現場監督は、作業員の命を家族から預かっている
この思いではないでしょうか。
その思いがあれば、労災隠しなどの恥ずかしい真似は絶対にできないはずです。そんなの大手であろうが中小であろうが地元であろうが、人として当然のことではないでしょうか。
会社の規模で安全意識が変わるなど、絶対あってはならない。心からそう思います。