僕がこの業界に入って、一番不合理に思ってきたのがこの安全に関する定型イベントです。なんとなくみんながやっていて、それでいて目的を全然果たしていない。だらだら感がすごいんですよ。
例えば朝。みんな脱力して体操し、なんとなく安全注意事項を並べ、現場監督は定型のコメントを伝える。新規入場者教育は単に読むだけ。これじゃあまともな朝のスタートを迎えることなんて、出来るはずがありません。大事な事は、作業員さんに「考えさせる」事にあります。
1,ラジオ体操
これが「だらだら」する一番の原因は「やらされている」感が常に漂うことです。だから、「何故、ラジオ体操などの準備運動が必要なのか?」の情報を共有することが必要です。準備運動をしたときの体の動き、長期間続けたときの体に及ぼす影響。ひとつひとつの運動が、何処を動かし、どの部分に働くのか。勿論長々と話すのではなく、3分程度に分けて少しずつ説いていく。これを続けることで、ずいぶん動きは向上します。出来ない子は目の前でやったり、声をかけてあげる。絶対に怒ってはいけません。本人が「やりたい」と思うことが大切なのです。
2,朝礼
朝礼内容は、できるだけ具体的に発表させましょう。どのようなワードがダメで、それが何故なのかを説き、安全に影響を及ぼすものが何なのか、を朝礼からTBMに至る流れの中で簡潔に説明し、最終的にはそれを「職長」から自発的に話せるようにします。これには本当に時間がかかりますが、少しづつ根気よく行うことで、TBMの職長指示が具体的に変わってきます。ここでも大切なのは「自分の頭で考える」こと。決して「押しつけない」が大切です。「それは~なの?」と常に疑問形で応対し、職長や作業員が何を考えているかを聞くことで、「考える」習慣が身についてくると思います。
逆に、定型の指示や、お決まりの役に立たないルーチン、例えば「声を出すだけの指差喚呼」や「無意味な安全イベント」などは僕の現場では廃止しています。大切なのは「メリハリ」です。朝礼は10分を超えるとだれてしまいます。常に「削る」事を意識することですね。
3,新規入場者教育
新規入場者教育は動画を利用して上映しています。このことで、現場監督が時間拘束から解放され、管理業務に専念できるようになります。内容は絵や地図、図面を利用してわかりやすく表現し、ありきたりな指示事項は極力削っています。最長でも15分。できれば10分程度まで削ることが大切ですね。
4,パトロール
現場内パトロールは大切なイベントですが、ともすれば「白い巨塔」の院長の総回診になりがちで、ぞろぞろと現場を歩くだけ、になってしまいます。これを僕の現場では「Aさん、Bさんは電動工具のチェック担当」「Cさん、Dさんは足場の不備チェック担当」と役割を分け、15分の巡回でそれぞれがそれを報告する形をとっています。このように「なんとなく」現場を回るのではなく、特定の目標物を意識することで、現場の問題点をしっかり発見出来るようになります。
5,場内清掃
これも同じ、担当パートを協力会社ごとに細かく割りましょう。自分の所を清掃するのではなく、みんなが共有している場所(休憩所、トイレ、通路、階段、足場など)を明確に指定し、15分の中で着実にその場所を綺麗にする。しっかり場所と時間を区切り、だらだら行わないことが大切です。
いかがでしょうか、現場に大切なのは「考えること」と「メリハリ」です。作業員さんはロボットでもマネキンでもありません。常に心をこめて、短時間で必要な事を伝える努力を行うこと。これが大切だということを忘れてはいけないと思います。