現場あれこれ

朝礼を有効なイベントにするには?

なんかかっこいいタイトルにしちゃいましたが、現場の職員にとって無くてはならないのが朝の始まり、朝礼です。

この朝礼で話す内容、このブログを読む技術者さんは、どのようにしていますか?一番、悩ましいと思っているのは「マンネリ化」ではないでしょうか?

通り一辺倒な安全指示は、作業員さんから飽きられてしまう。でも毎日毎日のことで、そうそう変わったことは言えないしなあ。。。

これが現場監督の正直な本音かもしれません。

では、作業員に伝わる朝礼とは、どういうものなのでしょうか?いくつか要点をまとめてみました。

1,具体的な行動をシンプルに伝える。

 例えば、このような安全指示があるとしましょう。

今日は、大工さんがスラブ上に型枠材を吊り込みます。道路からの揚重ですので、大工さんは揚重・玉掛けルールをよく守って、周囲を十分に確認してから作業し、他の作業員に注意して作業して下さい。

 これ、伝わると思いますか?

たぶん、作業員さんは何も行動を変えないと思います。

じゃあ、これはどうでしょう。

 今日は、南の道路から型枠吊りです。作業員さんは南側②~④通り間は立入禁止です。玉掛者は足場上ですので墜落防止器具を使用し、玉掛けして下さい。他職が吊荷下に入ったら大きく声がけし、一時中断して下さい。

しゃべっている内容はほぼ3行程度で変わりません。でも伝えている内容が天地ほどに違います。つまり

1)何処が立入禁止か等、場所と行動を明確にしていること。

2)違反の場合の具体的な行動を指示していること

みな、ルールは「おぼろげ」に理解しています。しかし何がいけないのかを「強調」しないとそのルールの何処が重要かが解らないですよね。TBMにおいても、朝礼においても、「具体的に言い換え、かつ要点を強調して」守るべきものを特定すると、自然と作業員さんはそれを「意識」するようになります。この「具体的な言い換え・強調」が大切なのです。他にもいくつか上げてみましょうか。

  • ①雨が降っているので足下のぬかるみに注意して下さい。
  • →雨降りです。走らずゆっくり歩き、足場前で必ず泥を拭って下さい
  • ②バックホウの旋回範囲に注意して下さい
  • →バックホウ廻りにコーンを置いて区画し、立ち入らせないで下さい
  • ③タイル屋さんと左官屋さんは上下作業に注意して下さい
  • →左官屋さんは南面で午前中午後から東面、タイル屋さんは午前南免で、午後西面作業とします。左官屋さんは南面が終了したら、タイル屋さんに電話連絡し、同じ面で絶対に作業しないで下さい。

同じような言い方でも、説得力が違うことが解りますよね。このような指示を続けていると、作業員さんの方もシンプルに着目点が上がり、現場も良くなるのです。

2,何故、それが必要かを理解させる時間にする

我々ゼネコンでは、極力脚立を排除し、立馬作業を義務づけています。

では何故、脚立よりも立馬で作業をするべきなのか?

あなたはきちんとその理由を説明できますか?

現場にはたくさんの具体的なルールがあります。作業員はみなルールを「やらされている」感を持っています。それを「絶対守らなければ」と思わせるには「その理由を明らかにすること」が一番の早道です。

さきほどの答えは

「脚立は足を置いている場所が「棒」であるため、作業によってバランスを崩した際に調整代がなく、更に脚立のトップを「またいで」いるため転倒事故につながりやすい。それに対して立ち馬は「床面」であり、足の平全体でバランスを取れ、また体重移動がフリーに出来、バランスを崩しても転倒転落しにくく、またそうなって飛び降りる際も体が自由になって怪我をしにくい。実際統計上でも脚立を使っていた頃と、たち馬を使用している現在では、2m以下の軽事故の発生頻度は半分に減っている。」

です。たった一つのルールにさえ、これだけの「理由」があるのです。

作業員のほとんどは、その「何故」を説明されていません。勿論、最初からくどくどといろんなルールを長い時間をかけて説明しても、彼らの耳には入りません。

何か事故が起こった時、そして今からその道具を使うときなど、現場には「節目」があります。その節目節目でしっかり「ルールの理由」を説明する。それに、朝礼の1,2分は最適なのです。毎日、趣旨と対象を変えながら「何故」を一つ一つ説明していく時間。これが朝礼のあたえられた重要な役割です。

3,職長の理解度をチェックし、正しい考え方を教える

朝礼ではまた、職長さんから「今日の作業」と「安全注意事項(他職への注意喚起)」が発表されます。

では監督さん、何故それをさせるのですか?明確に答えられますか?

「そんなの、みんなに作業の内容を周知するために決まってんじゃん!」って答えられそうですね。

はい、一面的にはそうです。しかし、作業員はそれをちゃんと聞いていますかね?僕の経験では、あの職長の発表、ほとんどの人が右から左でほぼ頭に入っていません。数年前、思い切って「作業内容発表」を止めてみたんですよ。結果はほとんど変わりません。だって聞いてないんだもの。。

身も蓋もない話ですが、それは、ただ流しているだけだからそうなるのです。では、どうすればいいのでしょうか?

1)発表された作業内容が的確に今日の作業を表しているか?

2)付随する安全注意事項が、現実に即した適切なものか?

僕はいつも2点に注目しその上で、「全体に影響する」ような不適切なものがあった場合、必ずその発言をTBMに参加して「このように考え・発言して下さい」という指導の材料にしています。これを毎日誰かに行うようにすれば職長は「自分の発言を聞いてくれている」「不適切なことを言うと指摘を受ける」との意識が芽生えます。

この毎日の繰り返しが大切。

これによって、「作業員が聞いてくれる」具体的な内容を職長が初めて話してくれるようになります。そう、職長が監督の代弁者となるのです。

緊張感を維持し、職長が適切な安全指示が出来るようになるには、気の遠くなるような時間が必要です。それを毎日毎日諦めずに繰り返すことが、彼らの安全意識の向上と事故件数の減少につながるのです。

4,時間がかかることは思い切って切り捨てる。

ここまで聞いて、「うわあ、大変」と思った人、いませんか?

そんなことはありません。実は僕の現場の「朝礼」は他のゼネコンよりも「短い」事で名が通っているのです。何故でしょう。

1,指差喚呼の練習など、定型イベントをしない(安全帯よし!とかね)

2,一人の説明は長々としない。説明・訓話は3人まで、目安1分

3,司会は職長に任せず、慣れた現場監督がテキパキ行う

これを心がけているからです。五感生き生きとか、平均台歩行とか、安全帯練習とかやったことがありますが、みんなやめてしまいました。

結局、そういう運動は「マンネリ化」して駄目だからです。だれる原因になること、モチベーションを高く維持できないことは思い切って諦め、大切なことにのみ集合時間を利用する事が、経験上最も効果があることを感じています。

結論:短く・具体的に・熱意を持って

いかがでしたでしょうか。朝礼の進め方は所長が100人いれば100通りのやり方があり、僕以外のやり方を否定する物ではありません。

朝礼の内容が薄いなあ、、とかもうちょっと言うことを聞いて欲しいなあ。と悩んでいる監督さんの参考になればと、具体例を書いてみました。

何処かの現場の、ヒントになれば凄く嬉しいですね。